ヤマハにおけるソプラノサックスの歴史は、ニッカン(日本楽器製造)の吸収合併から始まりました。そして技術を吸収し、研究を進め、1970年代後半にプロモデルとしてYSS-62を製造します。これが特にジャズやポップスのプレイヤーから絶大な支持を受け、「世界のYAMAHA」としての地位を確立していきます。この記事では、中古品の買取価格にも影響がある、中古市場で人気の高い歴代ソプラノサックスの魅力を深掘りします。
YSS-62 / YSS-62R:「伝説のワンピ―ス」
特徴・人気の理由
YSS-62は、1978年に発売され、現在販売しているカスタムZシリーズ(YSS-82Z)の礎となった、ジャパンヴィンテージとして海外でも人気が高い、まさに「伝説」と呼ぶにふさわしいモデルです。最大の特徴は、ネックからベルまでが一体となった「ワンピース構造」です。これにより、楽器全体が効率よく振動し、抵抗感が少なく息がダイレクトに音になるような吹奏感が得られます。
そのサウンドは、甘く、温かみがありながらも、芯のある力強さを兼ね備えています。特にジャズやフュージョンのプレイヤーから絶大な支持を得ており、その表現力の高さは現行のカスタムモデルに勝るとも劣らないと評価する声も少なくありません。
YSS-62がストレートネックの一体型であるのに対し、YSS-62Rはネック部分がカーブしているモデルです。構えやすさや音色の好みで選ばれます。また、ゴールドラッカーモデルのYSS-62に対して、YSS-62S/YSS-62RSという銀メッキのモデルもあります。銀メッキモデルは生産本数が少なかったようで、中古市場価格でも、ゴールドラッカーモデルより約10万円ほど高い傾向にあるようです。
なおYSS-62RSは、ジャズ界の巨匠、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)が愛用していたことでも有名で、特にジャズ界においてヴィンテージ化しています。
中古市場での状況
1992年の生産完了から30年以上が経過しているにもかかわらず、その人気は衰えることを知りません。状態の良い個体は40万円以上という高値で取引されることもあり、「見つけたら即買い」と言われるほどです。プロの愛用者も多く、ジャズやポップスだけではなく吹奏楽でも扱いやすいオールラウンダーなソプラノサックスで、まさにヤマハヴィンテージの代表格です。

YSS-675:「デタッチャブルネックの優等生」
特徴・人気の理由
YSS-675は、1992年にYSS-62の後継として登場したプロモデルです。YSS-62のワンピース構造とは異なり、こちらはネックが着脱できる「デタッチャブルネック」方式を採用しています。これにより、異なる素材や設計のネックに交換して音色をカスタマイズすることができます。現在のカスタムEXシリーズ(YSS-875EX)の直系の祖先と言えるモデルです。オプションネックは18種類あり、交換によって音色や吹き心地、構え方等を好みのものに変えることができます。
吹奏感はYSS-62よりもやや抵抗感があり透明感のある音色で、コントロールもしやすく、音程の安定感に優れています。そのため、クラシックや吹奏楽の奏者からも高い評価を受けました。クセが少なく、どんなジャンルにも対応できる「優等生」的なキャラクターが魅力です。YSS-475と比べると100グラムほど重く、より艶のある良い音が鳴らせます。
中古市場での状況
YSS-62ほどプレミア価格がつくことは少ないですが、その安定した性能と信頼性の高さから、中古市場でも根強い人気があります。質の良いソプラノサックスを手頃な価格で探している方にとって、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢となります。

YSS-475:「隠れた名機」と呼ばれる入門モデル
特徴・人気の理由
現行のYSS-475IIの旧モデルにあたります。2002年に発売された、軽量で耐久性に富んだソプラノサックスです。位置づけとしては入門~中級者向けの「インターミディエイトモデル」ですが、その作りと性能は上位機種に迫るものがあり、「価格以上のクオリティを持つ隠れた名機」として知られています。
キイの操作性が良く、吹きやすさ、音程の正確さといった基本性能も非常に高く、これからソプラノサックスを始める方や、アルトやテナーからの持ち替えを考えている方にとっても、安心して使える一本です。
中古市場での状況
比較的新しいモデルのため、中古市場でも手頃な価格で見つけることができます。「安くても、信頼できるメーカーのしっかりした楽器が欲しい」というニーズに完璧に応えるモデルとして、非常に人気があります。学生さんの最初の楽器としても最適な選択肢です。

ソプラノサックス、生産完了品の市場価値
中古品の購入でも、この記事で紹介したような価値のある生産完了品モデルを購入して大切に使っていると、再び中古品として売却することも可能になります。また、もしかつて使っていた楽器がこれらのモデルだった場合、購入希望者が多数いる可能性がありますので、一度参考に見積もりを依頼してみてはいかがでしょうか。
特にソプラノサックスは、モデルの数も、市場に出回っている楽器の数も、アルトサックスやテナーサックスより比較的限定されています。もし物置などに眠っている楽器があったら一度取り出して確認してみることをお勧めします。