サックスを選ぶとき、メーカー(ブランド)の違いは非常に重要です。なぜなら、メーカーごとの品質、音色の傾向、モデルのリセールバリュー(中古での価値)が異なるからです。本記事では、中古市場で特に評価が高く、買取でも強みを持つサックスメーカーを「リセール価値」の高さ順に6カテゴリに分けて紹介します。
これからサックスを買うけど売却時のことも踏まえてメーカーやモデルを選びたい、という方に役立つ情報です。
ヴィンテージモデルをのぞいて、トップクラスのブランドを高値として、後半になるにしたがってリセール価値が下がってきます。もちろん目安として記載した売却金額はモデルや売却の時期によって変わってきますので、複数の買取業者から見積もりをとって比較検討しましょう。
1. トップクラス:市場価値が非常に高いブランド
Selmer Paris(セルマー)
セルマーはサックスの代名詞とも言えるフランスの老舗ブランドで、高品質な製造技術に支えられた良質の音色が特徴です。Mark VI や Series II / Series III などの名機はヴィンテージ市場でも非常に高い需要があります。
- 代表モデル:Selmer Mark VI(ヴィンテージ)、Serie III
- 目安の買取相場:状態や年式により大きく変わりますが、条件がそろえば30万円以上となるケースもあります。
Yanagisawa(ヤナギサワ)
日本国内唯一のサックス専門メーカーであり、プロモデルを中心に高い技術力を誇ります。特に WO シリーズは精度と音のまとまりの良さで知られています。
- 代表モデル:WO シリーズ(例:A-WO10、S-WO10など)
- 目安の買取相場:国内外で非常に安定した中古需要があり、10万~20万円台あたりが目安です。
Yamaha(ヤマハ)
言わずと知れた日本の総合楽器メーカーで、信頼性と技術力を背景に、学生モデルからプロ用カスタムまで幅広いラインナップを持っています。戦後の日本のサックス普及にも大きく貢献しました。
- 代表モデル:カスタムシリーズ(例:YAS-875EXなど)
- 目安の買取相場:アルトやテナーの定番モデルは中古でも流通数が多く、10万~20万円前後という例があります。
▼セルマー、ヤナギサワ、ヤマハの買取相場をまとめて知りたい方はこちら▼
2. 上位:プロ/中・上級者に人気のブランド
Keilwerth(カイルヴェルト)
ドイツのブランドで、堅牢な作りと深みのある音色を持つモデルが多いです。特にプロや中級~上級者に好まれています。
- 代表モデル:SX や ST シリーズ
- 目安の買取相場:ヴィンテージモデルに対して一定の評価があり、質のよいものは中~高レンジで取引されています。
Conn-Selmer / Conn / King(コーン・セルマー / コーン / キング)
コーン・セルマーはアメリカの楽器製造メーカーで、現在のコーンとキングは、コーン・セルマーの傘下の会社となります。コーン、キング、ともに100年以上の歴史を持つ老舗メーカーで、ヴィンテージサックスで知られています。
- 代表モデル:Conn 10M、King Super 20など
- 目安の買取相場:コレクター需要もあり、ヴィンテージモデルはプレミア価格がつくこともあります。現行量産モデルは中価格帯です。
3. 中堅~強め:性能と価格のバランスに優れたブランド
Cannonball(キャノンボール)
アメリカのメーカーで、ジャズ系のブランドとして人気が高く、見た目のデザイン(彫刻・ラッカー)に特徴があります。比較的新しいブランドですが、中古でも人気があります。
- 代表モデル:Big Bell シリーズなど
- 目安の買取相場:デザイン性や音質が重視され、特定のモデルで価格が一定しており、「コスパが良い」という意見が掲示板サイトなどで見られます。中~やや高め。ただし基本モデルはリセール差が大きめです。
P. Mauriat(P.モーリア)
手ごろな価格で高品質の楽器を提供する、コストパフォーマンスに優れた台湾のブランドです。見た目と音質、ともにクラシック系やポップス系での評価が高いです。
- 代表モデル:PMXA、PMXT など
- 目安の買取相場:中~中上という相場感。状態次第でかなり幅があるものの比較的価格が維持されています。
4. モデルによって評価が大きく変わるメーカー
Peter Ponzol / Rampone & Cazzani(ピーター・ポンゾール / ランポーネ アンド カッツァーニ)
いずれもイタリアの小規模メーカーです。Peter Ponzolは非常に高い精度で作られたマウスピースを各メーカー向けに販売しています。ハンドメイドサックスのメーカーであるRampone & Cazzaniの新品は、日本では石森管楽器が取り扱っています。
- 目安の買取相場:モデルや年式で評価が分かれやすく、中〜中上な相場です。
Buffet Crampon / Evette-Schaeffer(ビュッフェ・クランポン / イベット&シェーファー)
主に木管楽器を扱う老舗で、クラリネットで有名なフランスの会社です。Evette-Schaefferはもともとサックスを米国で展開する際に作ったブランドだったという話があるようです(所説あり)。伝統的な作りと信頼性が強みです。
- 目安の買取相場:すでに存在しないこともあり市場にはあまり出ておらず、モデルや年式に依存し、中〜やや控えめな相場です。
Eastman(イーストマン)
Eastmanは、1992年に設立されたアメリカの工房系ブランドです。ボブ・ミンツァー氏が愛用しているとされ、近年日本でも注目を集めています。
- 代表モデル:中級〜上級の Eastman Sax
- 目安の買取相場:中~中上。特定のシリーズは近年評価が高いようです。
Chateau(シャトー)
比較的コストを抑えた台湾のブランドです。米国やフランスのメーカーのOEM先でもあり、大変品質はよいです。入門者向けモデルが中心です。
- 代表モデル:Chateau Standard series
- 目安の買取相場:低~中。状態が良いものは値がつきやすいようですが、大きな期待はしにくいです。
5. エントリー~流通多数:初心者向けブランド
Antigua(アンティグア)
アメリカのメーカーです。比較的コストを抑えつつ安定性能を持つブランドで、初心者~中級者に適したモデルを多くそろえています。
- 代表モデル:Antigua の入門〜中級モデル
- 目安の買取相場:低~中。モデルによっては再販が難しいものもあります。
Jupiter(ジュピター)
学生~中級者向けに強い台湾の総合楽器メーカーのブランドです。信頼性が高く、初めてのサックスに選ばれることも多いです。
- 目安の買取相場:比較的低~中(流通量が多いため値崩れしやすい)です。
Trevor James(トレバー・ジェームズ)
フルートのブランドとして有名な英国メーカーです。
- 目安の買取相場:低~中。再販差が出にくく、買取額は控えめな傾向です。
6. ヴィンテージモデル:モデル単位で価値が決まるブランド
このカテゴリでは、ブランド名そのものではなく、特定のヴィンテージモデルが高く評価されます。
- Conn(コーン)
- 代表モデル:Conn 10M などは、ヴィンテージ市場でコレクター需要が高いです。
- 目安の買取相場:極めて幅が広く、保管状態・年式によって大きく変動します。
- King(キング)
- 代表モデル:King Super 20 などがあります。音の太さが魅力です。
- 目安の買取相場:ヴィンテージ品は非常に高値になる可能性があります。
- Buescher(ビッシャー)
- 代表モデル:かつてアメリカでジャズを支えたサックスメーカーで、Buescher Aristocrat 等、歴史的価値に強い側面があります。
- 目安の買取相場:コレクター層には強く、状態次第で高価査定されます。
- Martin(マーチン)
- 代表モデル:コーンの社員だったマーチンが設立したアメリカのメーカーです。こちらも歴史的な価値が高いです。
- 目安の買取相場:ビッシャー同様コレクター層に強く、状態次第で高価査定されます。
まとめ:メーカー選びは「将来価値」と「使い方」を見据えて
サックスのメーカーを選ぶ際には、以下のポイントを重視するのがおすすめです。
- 中古でのリセール価値を考える
トップクラスブランド(例:セルマー、ヤナギサワ、ヤマハのプロ機)は、音質的に安定していますので安心して使えますし、将来的に売ることを考えても強みがあります。 - 演奏スタイル・用途を明確に
ジャズ、クラシック、吹奏楽など、あなたの使いたいシーンに合ったブランド・モデルを選びましょう。 - モデル別の流通量と市場動向をチェック
ヴィンテージや限定モデルは売却時に高値が出やすいですが、流通数が少ないです。逆に学生向けモデルは流通量が多く容易に購入できますが、売却時に高値が出にくいです。 - 買取店や専門店を確認する
売却時は、ブランドごとの価値を正しく評価できる専門店を選ぶと、高額査定を引き出しやすいです。


