【中古で探す名器】セルマーのアルトサックス・歴代モデル解説 | MARK VI、MARK VII、Super Action 80など

コラム・知識
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サックスの代名詞とも言えるフランスの老舗メーカー「H.Selmer(セルマー)」。そのアルトサックスは、100年以上にわたり世界中のトッププレイヤーに愛され、ジャズからクラシックまであらゆる音楽シーンの「基準」となってきました。

サックスを発明したアドルフ・サックスの会社を1929年に買収し、サックスの正当な継承者となったセルマーの歴史は、そのままモダンサックスの進化の歴史と言っても過言ではありません。現行モデルはもちろんこれまでの知見を反映していて素晴らしいのですが、歴代の生産完了モデルには、現代の楽器にはない独特の響きや個性を持つ「名器」が数多く存在し、中古市場でも非常に高い人気を誇っています。

ここでは、中古市場で特によく見かける、あるいは探す価値のある歴代の主要モデルを解説します。また買取査定においてどのくらいの価格帯で取引されているかについてもまとめます。

なお、セルマーのサックスは全般的に資産価値が高く、中古市場でも高値で取引される傾向にあります。特に「Mark VI」などのヴィンテージモデルは、状態や製造番号(シリアルナンバー)によって価格が大きく変動します。買取査定においては、ラッカーの残り具合、管体のダメージ、タンポの状態はもちろん、オリジナルパーツの有無なども重要なポイントとなります。

Mark VI(マーク・シックス):「不滅の最高傑作」

特徴・人気の理由

1954年から1974年まで製造された、サックス史上最も有名で、最も人気のある「伝説的」なモデルです。現代サックスのキーレイアウトや設計の基礎を確立した機種であり、その操作性の良さと、ジャンルを選ばない柔軟で深みのある音色は、半世紀以上経った今でも多くのプレイヤーを魅了し続けています。

特にジャズ・フュージョン界の巨匠たち(アルトサックスでは、デヴィッド・サンボーン、ケニー・ギャレットなど)が愛用したことで神格化されており、現代の楽器には出せない「枯れた味わい」と「芯のある響き」が最大の特徴です。

製造時期によって「5桁(シリアルナンバーが5桁のもの)」「アメセル(アメリカ市場向けに組み立てられた個体)」など細かく分類され、それぞれに熱心なファンが存在します。

中古市場での状況

中古市場において最も高額で取引されるサックスの一つです。状態の良いものや人気の製造時期のものは、現行の新品価格を遥かに超えるプレミア価格がついています。ビンテージを好む方やコレクターの需要が根強くあり、状態や特定の年式・仕様によっては高額になる状況です。

買取相場は非常に幅広く、良い個体であれば50万円前後の査定が出ることもありますが、状態が普通や劣化ありの場合は100,000円程度に落ち着くケースも多いようです。特にオリジナルのラッカーが綺麗に残っているものや、「アメセル」と呼ばれる個体は驚くような高値がつきます。一方で、リラッカー(ラッカーを塗り直したもの)や修理歴が多いものは評価が下がる傾向にあります。

  • 買取相場の目安
    • Mark VII: 120,000円 ~ 400,000円
      ※各個体の仕様、状態により上下に大きく変動します。

Mark VII(マーク・セブン):「パワフルな異端児」

特徴・人気の理由

Mark VIの後継として1974年から1981年頃まで製造されたモデルです。当時のエレクトリック化が進む音楽シーンに対応するため、大音量でも音が割れず、パワフルに鳴り響くように設計されました。

管体が肉厚で重量感があり、テーブルキーが大きくガッチリしているのが特徴です。その分、息を吹き込んだ時の抵抗感は強めですが、鳴らし切った時の太く圧倒的な音圧はMark VIIならではの魅力です。操作性も良く、Mark VIよりもタイトなサウンドで、ロックやフュージョンなど、電気楽器と一緒に演奏をするプレイヤーから根強い支持を得ています。

中古市場での状況

Mark VIほど価格は高騰していませんが、そのパワフルなサウンドを好む層からの需要は安定しています。手が小さい人にはキー操作が少し難しいと言われることもありますが、ハマる人には唯一無二の楽器となります。

買取相場の目安としては120,000円 ~ 260,000円前後です。ただ49万円の買取事例もあります。個体の整備状態やシリアルによって査定額の幅は大きく変わります。

近年では、Mark VIが高すぎて手が出ないという層が、ヴィンテージサウンドを求めてMark VIIを選ぶケースも増えており、評価が見直されています。

  • 買取相場の目安
    • Mark VII: 120,000円 ~ 260,000円
      ※各個体の仕様、状態により上下に大きく変動します。

Super Action 80(シリーズ1):「現代セルマーの幕開け」

特徴・人気の理由

1981年から1985年頃までの短い期間に製造されたモデルで、通称「エイティー」や「シリーズワン」と呼ばれます。Mark VIIのパワフルさを残しつつ、キー形状やトーンホールなどを改良して操作性を向上させ、より現代的で洗練されたバランスの取れたモデルへと進化しました。「適度な抵抗があって粘りを出しやすい」という声があり、プレイヤーによってはSeries II/IIIより好む人もいるようです。

Mark VIのような渋さと、現代のモデルのような正確な音程感を併せ持っており、クラシックからジャズまで幅広く対応できます。製造期間が短いため流通数は少ないですが、「隠れた名器」として評価する専門家も多いモデルです。

中古市場での状況

流通量が少ないため、市場で見かける機会はそれほど多くありません。しかし、その希少性とSerie IIやIIIとも異なる特徴から、状態の良いものは高値で取引されます。 買取相場の目安としては120,000円 ~ 160,000円です。Mark VIIと同様、ヴィンテージとモダンの良さを兼ね備えたモデルとして、通好みの選択肢となっています。

  • 買取相場の目安
    • Super Action 80 シリーズI: 120,000円 ~ 160,000円
      ※各個体の仕様、状態により上下に大きく変動します。

Super Action 80 Serie II(シリーズ2):「世界標準のロングセラー」

特徴・人気の理由

1986年の発売以来、現在に至るまで製造され続けているロングセラーモデルです。世界で最も多くのサックスプレイヤーが演奏している、「世界標準」とも言える機種です。2010年ごろにデザイン、刻印、仕上げを見直した「Jubilee(ジュビリー)仕様」が登場し、以降はその形で流通する個体が多くなっています。

非常に素直、かつピアニッシモからフォルテまでムラのない吹奏感で、豊かな倍音としっかりした響きを得られ、特に中低域〜中域にかけての「伸びやかな音」「深み」「厚み」が強みです。クラシック、吹奏楽、ポップス、ジャズなど幅広いジャンルに対応可能で、ジャンルを選びません。息をしっかりと受け止めてくれる程よい抵抗感があり、初心者からプロまで、奏者の成長に合わせて応えてくれる懐の大きさがあります。

中古市場での状況

流通量が非常に多く、中古市場でも最も探しやすいモデルです。初期のモデル(1980年代後半~90年代)は、現行品とは少し異なる金属の配合や作りで「音が太い」として人気があります。

買取相場の目安としては150,000円 ~ 300,000円です。流通量が多いため、状態の良し悪しが価格にシビアに反映されます。刻印と彫刻を新しくした「ジュビリー(Jubilee)」モデルは人気が高いです。

  • 買取相場の目安
    • Serie II: 150,000円 ~ 300,000円
      ※各個体の仕様、状態により上下に大きく変動します。

Super Action 80 Serie III(シリーズ3):「華やかで軽快な新世代」

特徴・人気の理由

シリーズ2と並行して1996年から2021年まで販売された、より現代的なコンセプトのモデルです。シリーズ2よりもフォーカスされた音で輪郭が明確、中~高音域での音抜けが良く、またアルト特有の音の上ずりを抑制するなど音程精度が高いです。非常に明るく華やかで、レスポンスの良い軽快な吹奏感を実現しています。立ち上がり・反応性・安定性・操作性を重視し、「初めから吹きやすく」「鳴りやすく」「現代曲・バンド・吹奏楽にも対応しやすい」楽器、との評価があります。

なおアルトサックスのみ、2000年のミレニアム(Millennium)エディションという、特別仕様のモデルが存在しています。マット仕上げのブラッシュドシルバーのボディに、マットゴールドラッカーのキーという外観で、限定ということもあり、非常に希少性の高い仕様となっています。

また、単にSerie IIIとだけ表記されている時期がありますので注意が必要です。

中古市場での状況

シリーズ2と人気を二分するモデルでしたが、生産完了に伴い、その価値が再評価されています。特に「ジュビリー(Jubilee)」としてリニューアルされる前のモデルや、スターリングシルバー製のモデルなどは高値で取引されることがあります。仕様のバリエーションが多いため、刻印や仕上げの確認をしっかり行いましょう。

買取相場の目安としては110,000円 ~ 260,000円前後です。シリーズ2よりも定価が高かったこともあり、中古相場もやや高めで推移しています。

  • 買取相場の目安
    • Serie III: 110,000円 ~ 260,000円
      ※各個体の仕様、状態により上下に大きく変動します。

まとめ:セルマーのアルトサックスは「一生モノ」の価値がある

セルマーの歴代アルトサックスは、単なる中古楽器ではなく、それぞれが音楽の歴史を彩ってきた「名器」です。

「Mark VI」の伝説的な響き、「Mark VII」の圧倒的なパワー、そして「シリーズ2」「シリーズ3」の洗練された現代的なサウンド。これらは時代を超えて、今なおプレイヤーにインスピレーションを与え続けています。

中古市場においても、セルマーの価値は非常に安定しています。適切なメンテナンスが施された個体は、新品以上の輝きを放つことも珍しくありません。 もし、あなたが手元にあるセルマーの売却を検討されているのなら、そのモデルが持つ歴史的価値を正しく理解してくれる専門店に相談することをお勧めします。正しい評価を受けることが、次の奏者へのバトンタッチとつながるでしょう。

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