【中古で探す名器】ヤマハのバリトンサックスを解説 | YBS-62II、YBS-41II、YBS-61など

コラム・知識
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ヤマハのバリトンサックスは、その堅牢な作りと信頼性の高さから、吹奏楽の備品や個人の所有楽器として長年愛されてきました。ここでは、中古市場で特によく見かける、あるいは探す価値のある歴代の主要モデルを解説します。

なお現行機種ですが、2020年12月には、ヤマハのバリトンサックスとしては初のカスタムモデル「YBS-82」が発売されています。またその2ヶ月前の2020年10月には「YBS-62」や「YBS-480」が発売され、26年ぶりにラインナップが一新されました。

また買取市場の価格帯は、全般的に個体の状態によって大きく変動します。バリトンサックスは管体が大きく、修理・調整費用が高額になりがちなので、その楽器が次に店頭に並ぶまでにどれだけコストがかかるか、という点が査定に大きく影響します。大規模な調整(オーバーホール)が必要と判断されると低め査定になります。

YBS-62II:「プロモデルの王道」

YBS-62II

特徴・人気の理由

2020年に現在のカスタムモデル「YBS-82」が登場するまで、ヤマハのバリトンサックスにおける最上位機種として長年君臨した、定番のプロモデルです。学生からトッププレイヤーまで、活躍の場が多かったモデルです。吹奏楽の現場では、このモデルを備品として所有していることも多く、バリトンサックスのスタンダードとしての地位を築いていました。「学生時代に吹いていたのはこの楽器だった」という方も多いのではないでしょうか。

ベルが職人の手作業による一枚取りで作られていることで音の伝達がスムーズで、豊かでパワフルな響きを実現しています。またキイボタンに天然の白蝶貝を使うことで、指に吸い付くような自然な感触により高度な演奏をサポートしてくれます。また座って演奏する際に楽器を支えるためのペグ(支柱)が標準で付属しています。これらのことから、カスタムモデルに匹敵する豪華な仕様が特徴といえます。

そのサウンドはパワフルかつ重厚で、低音域から高音域まで安定したピッチで演奏することが可能です。大編成の中でも埋もれない豊かな響きを持っています。

中古市場での状況

上述したとおりの特徴により非常に人気が高く、中古市場でも常に需要があります。特に、彫刻が施されたモデルや、コンディションの良い個体は高値で取引されています。「プロ仕様の本格的なバリトンを手頃な価格で探したい」という方にとって、最も有力な選択肢の一つです。状態のよいYBS-62IIを見つけたら、一度試奏すべき楽器であることは間違いないでしょう。

買取相場の目安としては250,000円 ~ 400,000円で、状態による価格差が大きいです。高額査定が出るのは、ほとんど傷がなく、定期的にメンテナンスが施されてきたことがわかる個体です。タンポの状態も良好で、そのまま店頭に出せるような極上のコンディションの場合となります。純正のハードケースなど付属品が綺麗な状態で揃っているとプラス査定になります。

一方で、長年メンテナンスされておらずタンポ(パッド)が劣化して全交換が必要な状態で、ラッカーの剥がれや小さな凹みが複数あるなど使用感が強く、販売するためには大規模な調整(オーバーホール)が必要と判断される個体の場合は定額査定となります。

YBS-41II:「吹奏楽のスタンダードモデル」

YBS-41II

特徴・人気の理由

1996年の発売開始後、2020年まで製造されていたYBS-41IIは、YBS-62IIの下位機種にあたります。発売当初は40万円代半ばという価格設定で、抜群のコストパフォーマンスを誇り、主に学生やアマチュア奏者から絶大な支持を得たモデルです。上位機種の設計思想を受け継ぎつつ、一部の仕様を変更することで手頃な価格を実現していました。

ヤマハならではの正確な音程とスムーズな操作性は健在で、バリトンサックスが初めての方でも非常に扱いやすいのが特徴です。またパワフルで輪郭がはっきりとした明るいサウンドで、息を入れたときのレスポンスも良く、特に吹奏楽のアンサンブルによく馴染み、低音パートの基盤をしっかりと支えてくれます。ベルは複数パーツの溶接により作られており、キイボタンはポリエステルを使用しています。また彫刻はありません。

バリトンサックスは筐体が大きいためキイ操作も複雑になりがちですが、YBS-41IIは人間工学に基づいたキイレイアウトを採用しており、手の小さな学生でも無理なく操作できるよう配慮されています。

中古市場での状況

こちらも学校の吹奏楽部の備品として広く普及していたため、中古市場での流通量は比較的多めです。状態の良い個体が見つかれば、非常にコストパフォーマンスの高い買い物となるでしょう。「これからバリトンを始めたい」「なるべく予算を抑えたい」という方に最適なモデルです。

買取相場の目安としては150,000円 ~ 250,000円で、学校の備品だった楽器など、全体的に使用感が強く、キイガードの凹みや傷が目立つ状態であり、まず全体調整が必須と判断される個体の場合は低め査定になります。

一方、個人所有で大切に使われてきたことがわかる美品で、ラッカーのツヤも残っており、大きな凹みがない場合は高額査定になりやすいです。特にLow Aキイが付いている後期モデルは人気があります。

YBS-61:「伝説の初代プロモデル」

YBS-61

特徴・人気の理由

現在の「YBS-62」シリーズの礎となった、初代プロモデルです。1970年代から1980年代初頭にかけて製造されていました。現行モデルと比べるとキイの設計などに違いが見られますが、その堅牢な作りと、ヴィンテージならではの太く温かみのあるサウンドは、今なお多くのジャズプレイヤーなどから愛されています。

まさに「ヤマハバリトンサックスの歴史の始まり」とも言えるモデルで、歴史的に非常に重要な楽器です。現代の楽器が持つパワフルで重厚な響きとは少し異なり、より軽快で、ダークかつ温かみのあるヴィンテージトーンが特徴で、その独特の吹奏感やサウンドを求める熱心なファンが存在します。また非常に頑丈に作られています。製造から約50年が経過した今でも、多くの個体が現役で演奏可能な状態を保っていることが、その品質の高さを証明しています。

キーレイアウトが独特で、通常バリトンサックスのベル(朝顔)の側面にある低音(Low A, B, B♭)のキイが、現代の楽器では左側に配置されていますが、YBS-61は楽器の右側に配置されています。さらに現代のサックスでは標準装備されているHigh F#キイが、YBS-61には基本的にありません(※後期のモデルには搭載されている場合もあります)。

YBS-61は、誰にでもおすすめできる万能な楽器ではありませんが、ジェリー・マリガンのような、古き良き時代のジャズバリトンサウンドを求める方や、小編成のコンボジャズには最高の選択肢です。

中古市場での状況

製造からかなりの年数が経過しているため、状態の良い個体は少なくなってきています。しかし、その希少性から、コンディションの良いものは高値で取引されることもあります。ヴィンテージサックスとしての価値を理解した上で、じっくり探す価値のある一本です。

買取相場の目安は80,000円 ~ 200,000円です。この年代の楽器は買い取った後に必ず全タンポ交換と全体調整(オーバーホール)が必要になることを見越しての査定となります。奇跡的にコンディションが良く、ラッカーも綺麗に残り、最小限の調整で済むような場合、ヴィンテージ楽器としての価値をしっかり評価できる店舗であれば、高額査定の価格帯に届く可能性があります。

YBS-32 / YBS-52

  • YBS-32
    YBS-41IIのさらに前の世代にあたる、スチューデントモデル(入門機)です。
  • YBS-52
    YBS-62IIのさらに前の世代にあたる、インターミディエイトモデル(中級機)です。

特徴・人気の理由

これらのモデルはYBS-61と同様にヴィンテージの域に入りますが、中古市場で時折見かけることがあります。特にYBS-52は、YBS-61と同じ時代に生産された、一つ下のグレードであるインターミディエイトモデルです。音の輪郭がはっきりしており、温かみと豊かさを持ち、芯のある音色で、非常にバランスの取れた響きを持っています。その素直で扱いやすいサウンドは、ジャズやファンク、吹奏楽まで、幅広いジャンルに対応できるポテンシャルを秘めています。

YBS-52

YBS-52は、当時のラインナップとしては、学生向けの「32」とプロ向けの「62」の中間に位置するモデルでした。しかし、その作り込みとサウンドの質は非常に高く、単なる中級モデルという言葉では片付けられない「プロモデルに迫るクオリティを持つ名器」として、現在の中古市場で高く評価されています。

YBS-61と多くの部分で共通の設計思想を持っており、非常に堅牢に作られているため、適切なメンテナンスさえ行えば、この先何十年も現役で活躍できるほどの高い耐久性を誇ります。生産完了した今でもその価値が見直され、「隠れた名機」として探しているプレイヤーも多いです。この機種もYBS-61同様のキイレイアウトとなっています。


これらの歴代モデルは、それぞれに個性と魅力があります。ご自身の予算や求めるサウンドに合わせて、じっくりと探してみてはいかがでしょうか。またご自身が保有しているバリトンサックスを売却する場合は、使用感を改めて確認して査定価格の参考にしてみてください。

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