ヤナギサワは世界でも珍しいサックス専門メーカーであり、その工作精度の高さから「ヤナギサワなら中古でも安心」という強い信頼があります。2014年に、管体設計を一新しレスポンスが飛躍的に向上した現行の「WOシリーズ」が登場したことで、旧モデルの「900シリーズ」は中古市場でねらい目となっており、特に旧モデルの「A-992」はプロの間でも名器として愛され続けています。
ヤナギサワのアルトサックスは、日本人の手に馴染みやすい人間工学に基づいたキイワークと、繊細かつ芯のある「ヤナギサワ・トーン」が特徴です。今回は、中古市場で高く評価される歴代の主要モデルを、中古市場の売却価格での相場とともに解説します。
A-WO10 / A-WO20:「現行エリートモデルの完成形」
特徴・人気の理由
2014年に登場した現行のフラッグシップシリーズです。旧A-900系のモデルを全面的に刷新し、設計思想そのものから見直されました。ラインナップの中で、管体の素材、キイの質量、支柱構造、音の立ち上がりや抵抗感を変えたモデルを揃え、選択できるようになっています。
- A-WO10: ブラス(真鍮)製。明るくパワフルで力強い響き。吹奏楽からジャズまで万能。
- A-WO20: ブロンズブラス製。柔らかく濃厚で中低音域に厚み。重厚で温かみのある響き。
両モデルとも、管体の肉厚やキイポストの台座を重厚に設計しており、吹き込むほどに豊かな倍音が響きます。構造的に大きな違いはなく、素材が主な違いとなります。プロ・アマ問わず「一生モノ」として選ばれる現行の最高峰のラインです。
中古市場での状況
現行品かつ人気モデルのため、値崩れがほとんどありません。新品価格の改定(値上げ)が続いているため、中古で「程度の良い個体」を探すユーザーが非常に多く、常に品薄状態です。また仕上げによって金額が大きく変動し、受注生産となる金メッキ、銀メッキ、ピンクゴールドメッキ等のモデルは、新品の受注が休止となっていることもあって高額査定となります。
- A-WO10
買取相場の目安は100,000円 ~ 180,000円前後
状態の劣化や修理歴の有無が査定に影響します。修理の必要がない美品で付属品も欠品がない場合は高額査定となります。 - A-WO20
買取相場の目安は130,000円 ~ 220,000円前後
状態の評価が査定に大きく影響します。またケースやマウスピースなどの付属品も揃っていた方が高額の査定を得られます。
A-992:「伝説的なブロンズブラスの名器」
特徴・人気の理由
現行WOシリーズの直前(1990年代後半〜2014年)まで製造されていたモデルです。 特に「A-992」は、ヤナギサワのブロンズブラス人気を決定づけた伝説的モデルです。現行のWO20よりも「よりダークで、いぶし銀な深みがある」と評価するプレイヤーが多く、ヴィンテージ化しつつある名器として、あえてこのモデルを中古で指名買いする人も少なくありません。
中古市場での状況
生産完了から10年以上経ちますが、その人気は衰えません。2025年現在も、程度の良い個体は現行ライトモデル(WO1)よりも高値で取引されることが珍しくありません。A-992PGPなど仕上げの違いによっても査定額が変わってきます。
- 買取相場目安
100,000円 ~ 200,000円前後
状態次第で高値査定が望めます。付属品がすべてそろっているとなおよいです。
A-902 / A-901 II:「頑丈で実用的な前世代スタンダード」
特徴・人気の理由
A-WO1/A-WO2の前身のモデルです。A-901 IIがブラス製、A-902がブロンズブラス製です。管体やキイの配置は、初心者からプロまで幅広く対応できる汎用性の高い構造をしています。中古市場で流通量が比較的多いモデルです。A-902(ブロンズ製)は、管体がやや重く息の抵抗感や反応が違うことから、演奏家の表現の幅を広げてくれます。手頃な価格でヤナギサワらしい温かみのある音色を楽しめるため、現在も中古市場での狙い目のモデルです。
中古市場での状況
流通量が多く、比較的手頃な価格で手に入るため、サブ楽器や屋外用として購入するプレイヤーも多いです。
- A-901 II
買取相場の目安は60,000円 ~ 120,000円前後
使用感や状態の劣化程度が査定に影響します。付属品が揃っている場合でも、整備前提での買取となりそうです。 - A-902
買取相場の目安は60,000円 ~ 130,000円前後
A-901 IIと同様、使用感や状態・付属品次第で査定金額は増減します。状態良好で付属品が揃う個体は高めに出やすい傾向があります。
A-880 / A-800:「エリモナ時代のジャパン・ヴィンテージ」
特徴・人気の理由
A-800は1970年代後半に、A-880は1980年代に製造されていた「Elimona(エリモナ)」という愛称で呼ばれていたころのモデルです。 特に「A-880」はヤナギサワが世界進出を果たした時期の楽器で、セルマー・マークVIに匹敵する操作性と、日本製の精密さを併せ持つ「マークVIキラー」として有名です。
オクターブキイのアームがネックの下側(管体に近い方)を通るアンダースラング方式が特徴で、現代の楽器にはない「枯れた、力強い響き」を持っています。これは当時の設計思想として、ネックの振動を妨げにくく、太く柔らかい響きが得られるとされていたための作りです。ただ調整の仕方が悪いと、音程や反応が一気に崩れるというデメリットがあり、鳴る個体と鳴らない個体の差が出やすいとされています。
中古市場での状況
40年近く前の楽器ですが、現役で使える個体が多数残っています。ジャズ愛好家の間で「安くて鳴るヴィンテージ」として非常に高い評価を受けています。中古の流通状況は、A-880の方が多く、A-800の方が少ない状況です。ただ他のモデルと比べると流通量が多いとは言えず希少性は高いです。
- 買取相場目安: 80,000円 ~ 130,000円
- A-880
買取相場の目安は70,000円 ~ 140,000円前後
使用感や状態の劣化程度が査定に影響します。付属品が揃っている場合でも、整備前提での買取となります。 - A-800
買取相場の目安は45,000円 ~ 90,000円前後
A-880と同様、使用感や状態・付属品次第で査定金額は増減します。状態良好で付属品が揃っている場合は良い査定がでやすいです。
ヤナギサワのアルトサックスの最大の特徴は素材です。
- クリアでパワフルな音が好きなら → ブラス(真鍮)製(A-WO10, A-901 II, A-880など)
- 温かく重厚な響きを求めるなら → ブロンズブラス製(A-WO20, A-992, A-902など)
特にブロンズブラス製のモデルは、ヤナギサワ独自の評価を確立しており、中古市場での価値も非常に安定しています。
ヤナギサワは専門メーカーならではの「作り込み」があるため、10年前、20年前のモデルであっても、しっかり調整すれば現行品に負けない素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれます。ぜひ、ご自身の求めるサウンドに合わせて「一生モノのヤナギサワ」を探してみてください。
また、査定額を高めるコツとして、ヤナギサワは「ブロンズブラスの経年変化(黒ずみや酸化)」が起こりやすい楽器ですが、専門の買取店であればこれは「味」や「素材の特性」として理解されます。無理に研磨剤で磨かず、そのままの状態で査定に出すことが、オリジナルの価値を守る秘訣です。
